トルコ紀行(1)
異質な旅を求めて、トルコへやってきた。
トルコの西半分、約3000キロのバスツアーに参加することにした。
トルコに来て10日たつが、正直、あまり異国情緒はない。
西洋諸国とあまり変わった印象がないのである。
文字はアラビア文字ではなく、ローマ字というかラテン文字を使用している。
トルコは1923年に建国した。
建国の父、ムスタファ・ケマルは
当時わずか18%だった識字率をあげるため、
ラテン文字の採用を決定したらしい。
他のイスラム諸国と違い、女性の選挙権や教育を受ける権利なども
早くから導入した。
若い女性はスカーフもしていない。
しかし、EUはトルコのEU加盟を拒否している。
大きな理由は、国民の99%がイスラム教徒であるということだ。
トルコ人は比較的背が低く、髪の毛は黒い。
彼らのまなざしは優しく、国民は穏やかな性格だ。
地形も山が多く、日本人には親しみやすい。
ただし川はあまりお目にかからない。
主に地下水を使用しているらしい。
(ここはポスポラス海峡)
首都イスタンブールの昔の名前は、コンスタンティノープル。
紀元330年から1453年まで
東ローマ帝国(ビザンチン)の都として1000年も繁栄し、
その後もオスマントルコの都として
1453年から1909年までの450年間、栄えた。
この2つの帝国は宗教も人種も違うのだ。
紀元前2000年ごろからヒッタイト古王国、ペルシャ帝国、
アレキサンダー大王の征服、ローマ帝国、モンゴルの侵入を経て、
12世紀やっとトルコの国、セルジュークトルコ系の王朝が誕生する。
オスマントルコの末期も
強国のイギリスやロシア、フランス、ドイツに翻弄され、
植民地化の危機が訪れるが、建国の父、ケマルによって救われた。
このような民族興亡の歴史を見るたびに、
日本民族があと何年、日本列島に住めるか?心配でしかたがない。
国力を充実させた漢民族は必ず周辺国を脅かす。
それが中国の歴史なのだ。
食事の時にオレゴンに住むアメリカ人のインテリなオバ様に言われた。
「日本のためにアメリカが中国と戦争をすると思う?
そんな馬鹿なことはしないわよ。
We give up Japan(日本を手放すわ)」
やはりそうか?
どこに行ってもいつもそのことが気になる。
世界史に日中対立を避けるその知恵がないものか?
世界最大の寺院といわれるビザンチン帝国の
アヤソフィア寺院の直径31メートルの大ドーム。
オスマン皇帝歴代の住居であるトプカプ宮殿。
世界で一番古いモールといわれるグランド・バザール。
異国情緒を感じられる場所は、これくらいしか目につかなかった。
バザールはどこの店も女性の店員はおらず、
髭顔の親父風の男が押し売りの雰囲気丸出しで店の前に立っている。
セルフサービスに慣れた我々には居心地が悪い。
うるさくて仕方ない。
あとはエフェス、ヒエラポリスなど
ギリシャ・ローマ時代の遺跡ばかりを見学。
イスラム遺跡や文化を見られる機会はほとんどない。
これがイスラム国トルコ旅行か?
ちなみにローマ遺跡は1300カ所もあり、世界一多いらしい。
今回の発見は、考古学も歴史も実は文学だったと強く思ったことだ。
ホメロスの叙事詩、『イーリアス』の舞台となったトロイの遺跡を見た。
アメリカに行く前に2冊の本を読んだ。
一冊は『月と六ペンス』という、画家ゴーギャンの話。
もう一冊は考古学者シュリーマンの話。
考古学に興味を持っていたドイツ人のシュリーマンは
一時夢をあきらめ、ビジネスマンになった。
アメリカで銀鉱の経営で成功させ、
その後、その財力に物を言わせ、トロイの遺跡を発見する話だ。
実は私は彼の人生に憧れ、アメリカに来た。
ところが、この瓦礫の山のような遺跡では、
イーリアスの叙事詩で聞くような夢を感じるものは何もない。
映画で想像できるような華やかなものは想像できないのだ。
文学からくる想像力がすべてだ。
考古学も歴史も文学が無いと成り立たない。
いまさら気がついた。
トロイの舞台に立てて幸福なひと時でもあった。
だが自分はシュリーマンで無いことを思い知った。
もう一つ発見があった。
伝説ではトロイ戦の英雄の一人がイタリアに逃れ、
その二人の息子がローマを造った。
だからローマ帝国は先祖帰りとして
何度も何度も小アジアのトルコを征服しようとしたそうだ。
(つづく)
<By 浅野秀二>
2 件のコメント
浅野さんのグローバルな見識は世界の見て、歩きの積み重ねによるところも大きいですね。小生も少しは見習わなくては
今夜は自家栽培の落花生を茹でてビールを飲みます。なかなか良いものです。
サッカーで動き回るのも飛行機で動くのもあまり変わらないと思います。
体と心、頭を常に動かしていないと、ぼけますね。
魚釣りも農園作業も興味あります。
機会があれば高知の魚釣りにつれて行ってください。
コメントありがとうございます。
浅野