北欧の旅(後編) ノルウェー
思ったほど刺激のなかったデンマーク、スウェーデンから
ノルウェーに入った。
山に入り、徐々に高度が上がり始めた。
温度が下がってきて20℃前後になると、本当に快適になる。
連日30~35℃という北欧の人達が経験したことがない
暑い暑い夏に疲れていたのだ。
しかしパレスチナ、シリア、ウクライナの人々のことを考えると、
食事のまずさや35℃の気候に
不平不満を言っている自分が恥ずかしい。
家族の命を奪われ、怪我をし、水も電気もなく、
住み慣れた町や家を着の身着のままで逃げ惑う人たちもいるのだ。
自分の立場に感謝して生きないと罰があたる。
せめて戦火を逃げ惑う子供たちに
大きな未来が来ることを信じたい。
彼らの20年後に確実に起こる未来である。
イスラエルの行き過ぎた行為にも、
勝てない戦争にパレスチナの人たちを駆り立てる
ヒズボラの政治家たちにも、双方に腹が立つ。
経営者も同じ責任がある。
社員やその家族を短期的視野や感情で
リードしてはならないと強く思った。
さて、市内ではスーパーマーケットの大型店を
見る機会がなかったが、
初めてノルウェーで大型ショッピッングセンターにバスが止まった。
MAXIというIGA(Independent Grocers Alliance)の
メンバー店であった。
Walmart Supercenterのような大型店である。
青果売場。
年間の旬の野菜をパネルで掲示。
今の季節は上の矢印のところ。
サラダバー。
氷を敷き詰めた冷ケースにはもちろん北欧のサーモン。
シーフードの惣菜。
精肉コーナーには牛や豚の部位を示すパネル。
ホット・デリの対面コーナー。
商品の多様性、品質はアメリカとは比較にならないほど
選択が少なく、品質も劣る。
しかも25%の消費税のせいもあるが、価格が高い。
しかし、ここで面白いものを発見した。
IGA発行のクレジットカードに
自分で買った商品をこの小型の自動読み取り機のデバイスで
チャージしながら買い物ができるという仕組みである。
もちろん、客を信用するという前提がないと成り立たないが、
キャッシャーを通らずにそのまま外に出られるという
究極のセルフレジの仕組みであった。
これには感動した。
初めての体験である。
さてノルウェー2日目、
バスはいよいよ氷河で削られたフィヨルドに入った。
アメリカのヨセミテ国立公園のような光景が延々と続き、
660カ所以上の滝がいたるところでみられる。
壮大なスケールのパノラマだった。
滝の高さはさまざまだが、700mを超すものもある。
岩山は900m~1300mくらいある。
しかし滝の水が直接海に落ちているのか、
湖に落ちているのか、それが解らない。
ヨセミテバレーのような岩山の谷間に入っていく
大型船のクルーズがあるのだから、
これは湖ではなく、海岸の入江であるはずだ。
ところがとても狭く、波もなく、
静かでどう考えても湖にしか見えない。
この大渓谷と滝を、世界一急なクロム鉄道とフェリーで
3日間かけて遊覧した。
自然は偉大だった。
やっと北欧に来た感動が湧いてきた。
本当に来てよかった。
ヨセミテの何十倍ものスケールで、
フィヨルドは想像以上の光景であった。
2週間ついてくれているベテランのコーディネーターの女性は
「スイスより良い」と言葉を強めた。
フィヨルドを眺める美しい山のスロープにある、
1645年から続いている果樹農家に立ち寄った。
昔は漁業と羊農家、やがて酪農から果樹農家になったそうだ。
この100年で7ヘクタールの畑に4000本を植えた。
26種のリンゴ、ブルーベリーなどを作っている。
労働力は出稼ぎポーランド人2名とここの親子の家族労働。
販売は100%ファーマーズ・マーケットと自宅前の直売所で、
スーパーなどには出さない。
これしか中小農家が生き残るすべはない。
世界中どこも同じである。
今回の旅でも、どこに行っても中国人の団体が溢れていた。
現地で見た中国語の新聞には投資・移民という言葉が氾濫していた。
彼らは観光がてら来て、将来どこに移民するか
極めるために観光して歩いている…そう思えた。
逆にアメリカ人と日本人はどこに行っても、
自国が最高の場所だと確認するために
旅行しているような気がする。
自分がそうだ。
ここでも自分の幸運な人生を思った。
しかし、アジアの大航海時代を迎えた今日、
やはり彼らの(中国人)の未来の方に分がある。
日本の若者よ、世界をもう一度目指せ。
少子化時代、難しい時代になった。
<By 浅野秀二>