ヒューストンのスーパーマーケット事情
今年最後の流通視察出張である。
ヒューストン、ワシントンDC、ニューヨーク。
各都市2泊の旅に出た。
ダラスには2カ月に一度は行くが、ヒューストンは5年ぶりである。
ヒューストン市は全米第4位の町、
テキサスでは人口は一番多い市である。
2007年の時点で220万人もいる。
都市圏としてはダラスより少ないが、562万人の大都市圏を持つ。
だが不思議な事に、この町への流通視察は少ない。
フォーチュン誌のFORTUNE500の中で、
本社所在地はニューヨークに次ぎ、多い。
気候は亜熱帯、年間降雨量は1200~1300ミリ、
テキサスは農業州でもある。
農業生産は1位が畜産・肉業、2位が花卉・果樹園、
3位はブロイラー、4位は綿花、5位は酪農である。
スーパー業界では、ウォルマートが1位でシェアは、
27.6%(2010年)、昨年と比較して0.86%のマイナス。
クローガーは26.3%、1年間で1.14%のシェアを伸ばした。
これはプライベート・ブランドが27%まで伸びたことと、
FRPのデータべースの活用に成功したことが、大きな原因とされている。
イギリスのテスコ社の購買べース分析を行ったことで
有名になったDUNNHUMBY社。
クローガー社が2003年に共同で作った会社、
DUNNHUMBY・USAの功績がここにきて、現れた結果である。
次はHEBでシェアは15.6%、0.15%のシェアのアップがあった。
3社で70%のシェア、残されたシェアはわずか30%しかない。
今回の視察目的は、スーパーマーケット・ニュース社の
2010年6月07日のホームタウン・ゴメーの記事、
Rice Epicurean Marketsの記事確認もあった。
5店舗の独立店舗が、HEBのような大手ローカル・チェーンや、
全米1位のウォルマート、自然食スーパーのホールフーズのような
有力企業に、如何に有効に戦っているかを、見たかったのである。
「ライス・エピキュリアン・マーケットは、
ヒューストンで最も古いスーパーマーケット・チェーンである、
ライス・フード・マーケット(1937年創業、66坪)の一部門として、
1988年に最初の店をオープンした。
創業者はウイリアム・レビー氏、現在の社長は創業者の孫である。
1996年にライス・エピキュリアン・マーケットは、
ビジネス・スーパーマーケット誌で絶賛され、優秀栄誉を授与された会社である。
現在は5店舗あり、ホームタウン・グルメ、
スペシャリティー、惣菜の洗練された店である。
“Epicurean”とは食道楽を意味している。
名前の通り、料理学校で訓練されたプロの調理師が作る料理は、
ヒューストンでは有名である。
時には古くて、ローカル色豊かな料理が、
新しくて、グルメな料理と一緒に並ぶのである。
バラエティー、新鮮さこそ命、
これが大型、ナショナル・チェーンに対抗する
一つの有力な方法であると考えている。
また、デリ・惣菜には、コミットメントと一貫性が大事である。
メニューは25~35の主食レシピ、45~50のサイド・ディッシュ。
50~70種のサラダが常にローテーションを繰りかえす。
顧客第一主義、それが会社の哲学であり、成功の鍵はプリペアド・フードと考え、
とにかく客の要望には敏感、積極的に答えるようにしている。
デリ・惣菜の売上は9~10%であり、
各店舗ごとに一人のシェフがメニュー、労働コストなど
責任を持つ体制である。
この他、すぐれた花売り場、巨大な青果売り場との
コンビネーションで新鮮さとエキサイトメントを
醸し出すのに成功している。」
上記が記事の内容であった。
正直5年前に来た時は、苦戦をしていた。
かつて各大都市には高額所得者に圧倒的に支持される
高級・グルメ店舗、高収益・大繁盛店があった。
しかし、ホールフーズが出来てからは、ことごとく苦戦している。
ニューヨークのバルディッチ、サンフランシスコ周辺のドレーガー、アンドロニコス、
シアトルのメトロポリタン・マーケット。
(ニューヨークのゼイバーズ、ディーン&デルーカは
土地の無い都心にあるが、今でも繁盛している例外的存在である。)
彼らが提供してきた、ヨーロッパのグルメ・高級食材、比類のないサービスなどは、
ホールフーズの提供する、カスタマーサービスを凌駕する
エンターテイメント性、味、健康や環境配慮、有機自然食、
持続型生産社会、圧倒的な量感、色彩、バラエティのある商品など、
これらの新しい価値観の前では、勝負にならないのである。
ライス・エピキュリアン・マーケットの店には、今回も期待を裏切られた。
木曜日であったが、一番忙しい夕方6時に、客は閑散としていた。
涙が出る思いである。
私にはこれらのローカル高級店舗が、
ホールフーズに対抗する有力な手段は思い浮かばない。
顧客、社会、対応能力のスピードも、
ニッチへの挑戦もホールフーズには敵わない。
空港で移民局に一人留められ、1時間遅れで出発、
スケジュール変更を余儀なくされた。
最初の店舗はホールフーズ。
美人のマーケティング・スペシャリストが我々を待ちうけていた。
写真をご覧ください。
ホールフーズにはこのような秘密兵器もあったのだ。
視察はそっちのけ、彼女の笑顔に釘付け、
写真を取ることに忙しかった。
浅野さんだけが楽しんでいる???
翌日は、フユウ柿の果樹園の農業視察。
自分では収穫はせず、客が来て勝手に収穫し、
1ポンド、$1.39支払う、平均購入金額$400前後。
客はほとんどアジア人だった。
70歳のオーナーは54歳で退職後、この農園をスタート。
16年前に買った100エーカーあまりの土地の、
当時の価格は15万ドル。今では350万ドル、20倍に値上がった。
「はやく農場を売って海外旅行をしたい」悲鳴のように聞こえた。
金では時間は買えない。気持ちがわかる。
1100本のフユウ柿と、1200本のブラックベリー、薩摩ミカン、
アジア梨、これから植えるブルーベリー800本なども栽培をしている。
シーズン中の週末は、1日に客が数百人来ると言っていた。
この日はスクールバスで先生、父兄、たくさんの子供たちで賑わっていた。
農場にはシカや、猪が出るそうだ。
300キロの猪を仕留めたハンターもいる。
その後NASAを見学し、あらためてアメリカに偉大さに触れる。
そして、定番のセントラル・マーケット、
HEB PLUSも相変わらず繁盛していた。
夜はメキシコ料理とカラオケ、ダンス。
メキシコ系の女性が陽気に「さあ、踊ろう」と、
我々男の集団に誘いかけて来た。 最高の夜となった。
ビール、テキーラ、マルガリータ、大いに騒ぎ、飲んで踊った。
エンターテイメントの学び、実践こそ、今回の最大のテーマである。
これから、ワシントンDC、ニューヨーク、期待で胸が膨らむ。
「浅野さん最高~」
誰が酔っぱらって叫んだ、夜道が怖い。
金曜日の夜の徒歩の帰りは事故が危ない。
運転手もこちらも酔っ払いだ。
空は満月、テキサスの月を見て何を思う。
浅野秀二
11月22日