地中海クルーズ(1) バルセロナの巻
昔のことである。
フラメンコ・ダンサーの第一人者、小松原庸子
(だと思うが、記憶がはっきりしない??)
が新聞に書いていた。
「フラメンコ・ダンスは女のエクスタシーの表現であり、
その激しい蹴りは人を殺傷することも出来る。」
当時、日本拳法部で蹴りを得意としていた
私の若い心を激しくとらえた。
いや、蹴りの強さより、女のエクスタシーに、
興味を持ったのが正直な心かもしれない。
本物のフラメンコが見たい。
本場のスペインに行こう。
大阪の大学を卒業予定の高校の同級生から電話があった。
「浅野、東京に就職で行くなら、
新宿のエル・フラメンコに行こう。」
東京に到着するやいなや、彼とエル・フラメンコに向かった。
スペイン料理は初めて、メニューなどまったく解らない。
聞いたことがあるエスカルゴ(フランス料理)を
注文することにした。
文明人になるために、2人で目をつぶって食べた記憶が懐かしい。
その後、東京に就職をし、日比谷公園で真夏の夜の舞踏、
小松原庸子の踊りを何回か見たが、スペインに行く機会は無かった。
今回の山の神のお告げは、地中海クルーズであった。
最初の訪問都市はバルセロナ。
サンフランシスコからロンドンのヒースロー空港で乗り換え、
空港の寿司屋で、スパイシー(からい)うどんを食べた。
従業員の着ているTシャツの文句が気に入った。
「早い、楽しい、新しい」
まさに成功するための条件だ。
日本人は成功の条件は味と答える。
海外では必ずしもそうではない。
上記の3つの条件と、「量があれば鬼に金棒」
出港となるバルセロナ市についに着いた。
家を出て、24時間も経っていた。
観光は教会見物、正直もう飽きた。体が鉛のように重い。
ホテルは1992年のバルセロナ・オリンピックの
選手村を改造したホテルだった。新しい街、情緒は無い。
翌日のホテルの朝食に驚いた。
今まで食べたアメリカのどのホテルより、
フルーツ、ベーカリーの種類が豊富だった。
大皿に3杯たべる。
地図を頼りに、歩いてあの有名な建築家・ガウディが設計した教会、
サグラダ・ファミリアに向かう。
親しくしていただいている、商業建築で有名な黒川恭一先生の会社は、
ガウディ設計事務所、彼の名前を取っている。
高卒で東大教授になった、安藤忠雄も、
ここで大きなインパクトを得て人生が変わった。
私は興味本位、また教会か?と言う感じ。
遠くからグロテスクな姿が見える。
建築がはじまって100年以上も経つが、いまだ建築は続いている。
もうこの偉大な遊び心に感動した。
創造は遊び心、意味の無い世界を、意味あるものにする。
これが人間の知恵か?
意味ある世界を、偉大な宗教家やアーティストや天才によって、
人間は世の中の意味あることを知るのか?
この教会の異様な姿に驚いたが、特別に感動はなかった。
中に入る?12ユーロは高い?
いままでたくさんのヨーロッパの教会を見て来た。
入場は止めよう?でも1500円か?
思いなおす、それなら普通の金額だ。
結局教会の中に入ることにする。
その瞬間、いままで見たことのない、
外面から想像できない世界を見た。
これは何だ?理屈はない。
俺はこの世界なら好きだ。宇宙空間を見た気がした。
心が明るく楽しい、あの中世の教会、暗い、苦しみの世界から
解放された気がする。
これが極楽浄土とも思えた。この教会の歴史も宗教的理屈も知らない。
だだ、ただ強く感動した。私の本能を満足させた。
ありがとう。
あとは場末で、フラメンコ・ダンスを見て、
本場女のエクスタシーを感じたい。(これは無理、見るだけだ)
細くて手足がながく、野性的な肉体と、
鋭い目つきの踊り子だった。
特別、若くも、美人でもなく、魅力的でもなかった。
しかし踊り始めると、やがて妖艶が漂い、
女の激しい情熱や嫉妬、男の淡白な肉体や心と違う、
愛欲の激しさを感じる。
足を小刻み動かし、激しく床を叩いたかと思うと、
目をうつろに空に見上げ、時には睨みつけ、
上半身をスロー回転させる。
波は一気に登りつめない、
繰り返し、繰り返し、強弱を付けながら、床を蹴り続ける。
このような女の情念を知ったら、男は奈落の底に落ちるか?
それともこれを励みとして、人生の運気が伸び、上昇気流に乗るか?
2つのタイプがある。
後者は「あげまん」に会ったということになる。
さて、食品スーパーらしきものは、都市の中心に無かった。
昔馴染みの食料品店が、いまだに多かった。
唯一の例外は、デパートの地下が、
スーパーマーケットになっていた。
レベルは驚くべきものではない。
写真はEl Corte Ingeles Departmentである。
この周辺は街の中心、賑わいはすごかった。
特筆すべき点は、バルセロナのアメ横?、
市場(Mercat de La Boqueria)の質の高さは驚きだった。
果物・青果、陳列、彩、新鮮さ、
種類の多さ、楽しさ、魚も素晴らしい。
生ハムが目立つ、食事も出来てもう最高、
フォアグラ、カラスミはアメリカ半額だ。
アメリカのスーパーは、間違いなく、ここからも学んでいる。
そのような気がした。
都市部においては、このような市場の機能、
重要性は当分失われないと確信を持った。
明日はいよいよ出港だ。
コロンブスがここバルセロナで、
この海の先にはアメリカがあると叫んだ銅像がある。
15世紀のことである。
今、中国、インドの若者にとって21世紀は、
あのヨーロッパの大航海時代と同じような時代だと思う。
彼らはこれから想像を絶するインパクトを世界に与える。
彼らの武器は人口と移民と商魂だ。
日本は覚悟して、開国をしないと、彼らの植民地になる。
アメリカも、ヨーロッパも、同じリスクを感じている。
世界はめまぐるしく、激しく、動いている。
化石のような政治とマスコミに涙する。
浅野秀二
12月15日
3 件のコメント
相変わらずの洒脱な切り口とロマンティックな語り口。すばらしい! いつも楽しく拝見しています。
あーさん、かっこえー。まるでスペインの貴公子みたい。
mizkan様
くだらないことばかり書いているブログをいつ止めようかと
思ってきましたが、その言葉に励まされ、もう少し頑張ります。
ゲスト 様
貴女のような若くて美しい方から、そう言っていただけると
すぐのぼせます。
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