大ロシアの旅(Part1)
人生残された時間は少ない。
不景気、豚インフルは絶好の時間をくれた。
今しかない。
新興大国、BRICs(ブリックス)のひとつ、
ロシアに行きたい。
できればロシア経済・投資・小売業の視察ツアーで行きたいが、
アメリカには、日本のような研修ツアーは存在しない。
あるのは神社仏閣、博物館と教会めぐり。
観光ツアーはどこの国でも、過去に焦点を当て企画されている。
結果、現地の暮らしが見えない。
彼らは何を考え、何を悩んでいるのか?
月収は?
土地の値段は?
食品の価格は?
家賃は?
経済活動は?
その先に見えるその国の未来は?
その点、日本はありがたい。
その気になれば、さまざまな研修旅行がある。
今回行くリバー・クルーズ・ツアーは、
時間があるので多少は、セミナーが企画されている。
ロシアの歴史(1917年―1995年まで、共産主義の時代)
ロマノフ王朝、ロシアの地理、ロシア語学研修など、勉強のチャンスがある。
そもそもなぜ、ロシアに行きたいのか?
天然資源と人材の豊かなロシアは必ず大化けする。
また過去150年もそうであったが、
これからも、日本の未来を左右する超大国であるから。
他にも理由はある。
それはいつもの、私特有の問題だが…。
小学生の頃である。
家にはたくさんの古い絵葉書があった。
まだ台湾、朝鮮、満州などが日本であった時代のものである。
一枚の絵葉書に、綺麗なスカーフをかぶった、
顔の小さい美人の写真があった。
黒海とカスピ海の間のコーカサス地方は、
白人が誕生した場所、世界一の美人の産地と書いてあった。
子供心に決するものがあった。
いつか必ずロシアに行きたい。
やがて、その夢は長い間忘れていた。
そしてアメリカで、白人のことをコケージョン(Caucasian)ということを知った。
これはまさに、コーカサス地方が、白人発祥の地を意味していた。
あの絵葉書は本当のことを言っていたのだ。
ソ連が崩壊し、まだロシアが貧しかった7~8年前までは、
日本中にロシアンバーがあった。
帰る度に、松江のロシアンバーに案内された。
白い肌、目は青、黒、赤、そのすべてが交じり合った緑
とでも言ったほうが正確かもしれない。
ほとんどが大学生だという。
わずかな滞在で日本語を話すことができるようになる、
才色兼備である。
「デイトしようよ?」
「ダメ、デイトはしない、結婚してくれるならOK」
「俺は50才を過ぎているから、それは無理でしょう」
「問題はないよ。子供つくって、家族養ってくれるなら、
それで十分よ。年は関係ない」
40年前の日本女性(?)のような回答である。
その言葉には、日本人が長い間忘れていた新鮮な響きがあった。
貧しいことは、必ずしも不幸なことではない。
彼女達は日々真剣に生きているのだ。
ロシアに行きたい理由はもう一つあった。
モンゴルに行った時に、ロシアの前身は、
ジンギスカンの末裔のキプチャク汗国だったという話。
16世紀まではジンギスカンの末裔でないかぎり、
ロシアの皇帝にはなれなかった時代もあった。
モンゴル以前にも、ハンガリー、ヨーロッパに侵入した匈奴も
ロシアの地を根城にしていた。
いずれにせよ、アジア民族に2000年にわたって
蹂躙されたのが白人・ロシア人であった。
ところが、ロシア人は、
馬と弓を使用することにしか興味がなかったモンゴルを
銃の使用で簡単に滅ぼした。
(テクノロジーの勝利である。)
250年にわたってモンゴルの軍事力で蹂躙された彼らの歴史が、
その後のロシア人の考え方・政治・軍事の仕組みをつくる。
独裁政権、武力・軍事力のみが国家を束ねるという思想だ。
それはプーチン時代、そして今も変わらない。
(ついでに言えば、ロシア革命は、
レーニン、スターリン時代に6000万人を
殺していると言う説もある。第二大戦の2700万人も入っての話か?
これもモンゴルの大量虐殺に似ている。)
その後、白人国家、モスクワ公国が発展して、
イワン雷帝が強力な独裁的指導で1533年、大ロシアの誕生となる。
イワン雷帝の権力の源は銃であった。
大帝ビョートル1世(1671-1725年)の時代に繁栄を迎え、
その首都はペテルブルグに築かれた。
あの有名な大黒屋光太夫など、この都で女帝エカテリーナに拝謁をした。
後に、ナポレオンを破り、
ヒットラーの軍隊を壊滅させ、戦後は、アメリカと軍事的覇権を争った。
21世紀はどうなるのか?
白人国家・ロシアはEUと結び、
長い国境を持つ中国に対抗せざるを得ない。
「ウラル山脈を境にロシアが割れる」
これが半世紀前、フランスの大統領ドゴールの見識だった。
ロシアは超大国になりつつある中国に脅威を感じている。
日本を仲間に引き込みたいはずだ。
日本はどうする?
黄色人種として、中国の省になるか?
アメリカ、EU、インド、ロシアとうまく付き合っていけるか?
日本の繁栄と独立の一つの鍵は、ロシアにある。
今回のツアーはサンクト・ペテルブルグを流れるネヴァ川から、
多くの湖や運河を経て、ボルガ川を遡り、モスクワまでいく船の旅である。
ロシア建国・覇権街道をめぐる船旅だ。
(日本における東海道のようなものか?)
旅はまだ始まっていない。
なんと理屈の多い男だ。
自分がいやになる。
「ただの旅行だ、行きたいから行く」と言えば良いものを。
浅野秀二
7月25日