大ロシアの旅(Part 4) ~モスクワ到着の巻~
モスクワが見えた。
いよいよ1100キロの船旅も終わる。
モスクワを見ずしてロシアを語るなと言われる、
政治・経済・文化の中心である。
古くは、ジンギスカンが1238年の
モスクワ・クレムリン(砦という意味)を侵略、占領、破壊した地。
1812年、ナポレオンが20万人の兵士でモスクワを占領、
撤退時に爆弾を仕掛け、クレムリン宮殿を破壊した。
1941年には、ヒットラーが300万人でロシアへ侵入。
モスクワまであと23kmのところまで迫った。
国土の広いロシアは、首都を占領され、撤退したあとでも、
反撃を開始し、勝利している歴史がある。
日露戦争も、203高地での敗北、バルチック艦隊の全滅などは、
ロシアにとってまだまだ緒戦であった。
あのまま戦争を続けていれば日本は確実に負けた。
(私の祖父は冬の満州をワラジで戦っている。
日本には物資がなかった。
戦利品(土産)はロシア兵の皮の長靴であった。
子供のころはそれを履いて遊んだ記憶がある。)
新渡戸稲造氏の『武士道』という本を読んだ
アメリカのルーズベルト大統領が、
その高貴な武士道の精神に触れ、
「日本を絶対に滅ぼすわけにはいかない」と、
講和を買ってでて、日本勝利のもとに戦争を終結させた。
一冊の書物、精神が国家さえ救うこともある。
モスクワは船に3泊の宿泊をした。
港から見える光景は、岸壁に積み上げられた砂利。
森の中から見える、高層建築(マンション)。
建築ブームかと思ったが、都心見学のためか、
建築ブームというほどもでなかった。
モスクワは古い建物が多かった。
(郊外はまだ見ていないが)
北京と大きな違いである。
北京のように汚れた空気、喧騒はない。
ヨーロッパの町のように洗練された雰囲気がある。
モスクワのホテルはニューヨーク並みで、
一晩$400~$500と聞いた。
我々は船の中で宿泊と食事なので、
意外とクルーズの方が安く上がるのである。
人口 1200万人、周辺人口は1500万人を越える。
街の広さは100km四方で、
70%の人々がダーチャ(別荘)を持っている。
1700年代に発展し、橋は600箇所もある。
車は約400万台あり、年間20万台増えている。
モスクワのニックネーム「世界最大の駐車場」
と言われるほど、渋滞がひどい。
BMWやベンツが中心で、
フォード、日産も多くみられる。
しかし、トヨタ車が少ない。
レクサスも10年前には評判だったが、
今はそうではないらしい。
こちらはモスクワ地下鉄の長~いエスカレーター(深さ100メートル)。
韓国の会社の広告は多く、
日本食レストランも600店以上あると聞いたが、
やはり、韓国の服を着て寿司をサービスしている。
その他、普通のレストランにも、寿司はある。
世界中で「SUSHI」となり、日本食の領域を超えた。
日本の若者は、このチャンスをものに出来ない。
日本の変化は遅い。
日本は豊か過ぎるので、若者は冒険をしない。
レストラン学科やロシアですし屋を経営する講座、
誰かやりませんか?
テレビでしか知らなかった、
赤の広場、クレムリン宮殿と砦。
数々の教会。
政治中心の宮殿の敷地に11もの修道院・教会があった。
ロシア正教、宗教が政治の中心をなしていた。
共産主義も完全に宗教を禁止出来なかった歴史がわかる。
この広場に面して、
グムと呼ばれる宮殿のようなショッピング・センターがあった。
高級ショップが多く、人も多い。
しかし、買い物袋を持っている人は少ない。
街を歩いても危険な雰囲気、
恐怖を感じる場面はない。
賑やかで、自由で楽しく、
アメリカやヨーロッパの街と変わらない。
あの私のスリ事件は何であったのか?
被害者は私だけか?
よほど間の抜けた姿をさらしていたかもしれない。
夜はモスクワ交響楽団の音楽を聞いた。
カチューシャ、ドクトル・ジバコ、剣の舞など
お馴染みの曲が多く、大いに盛り上がった。
藤原紀香にそっくりな歌手の歌声に聞き惚れた。
途中ピエロが出てきて、
ノコギリや笛や、納豆売りのラッパなど
たくさんのガラクタを持ってきて、それで演奏した。
音楽界もエンターテイメント性がある。
ロシアは変わった。
民主化して18年。
2度と昔のロシアには戻れない。
自由と平和を楽しんでいる。
翌日、軍の歴史博物館に行った時に、
それをさらに確信した。
ロシアの栄光のこの軍の博物館には、
ロシア人は誰も来ていない。
我々と韓国の団体のみで、ガイドが嘆いていた。
現在、学校では30分しか、
ロシアの共産主義の時代・戦争の近代史を教えない。
やがて、スターリンもレーニンも知らない世代になるでしょう。
プーティンについて少し。
彼は、東ドイツに長い間住んでいたので、
ドイツ語はネイティブ、フランス語も話せる。
柔道を通じて日本を知り、尊敬する人は嘉納治五郎である。
彼は誤解されている。
本当は国際派で、ロシアは西欧州と価値観を必ず共有している。
後はロシア経済を支配するロシアン・マフィヤと
経済不効率の源泉の官僚制度をどのようにするか?
この問題解決には時間がかかる。
経済優先で来たため、
いまだに政治改革がなされていない
中国の異質性が浮かび上がる。
その中国でさえ、日本以上に留学生を海外に出している。
日本と北朝鮮こそ世界で異質な国と取られかねない。
それは右に極端か?左に極端か?だけの違いだ。
軍国主義も平和主義も危うい。
いつも最後に気になるのは、日本の事だ。
外国に住むと日本の良さがわかる。
世界で一番可愛いのは日本。
何とか、日本の良さを守ってもらいたい。
浅野秀二
8月4日