サンフランシスコ市内と周辺の食品小売業
2カ月ほど前、82年の歴史を持つ、
Andronico’sの資金繰りが苦しいという記事が
地元サンフランシスコの新聞に載っていた。
(創業1929年、最盛期12店舗、現在8店舗)
イタリア系・スペシャルティ・ストアで、
創業1919年のA.G Ferrari Foods(9店舗)も、
2011年4月に破産している。
(破産宣告中なので一部店舗はまだ営業しているが、
あとは何店舗残るかだ)
DeLano’s IGA Marketはサンフランシスコの店、
5店舗を2010年11月に閉めた。
2006年、クローガー傘下のRalphsから、
Cala FoodsやBell Marketsというバナーの店舗を譲りうけ、
2007年からIGAの店舗として経営をしていた。
しかし、労働組合のない店舗との激しい競争の中、
金融機関から投資を受けなければ競争ができず、
物件を所有していたクローガーに店舗を返還した。
サンフランシスコ郊外には、まだ3店舗あるが、
その行く末は不明だ。
閉店した店は、50年もの間、Cala Foodsの名で親しまれていた。
サンフランシスコのバンネス通りから始まるケーブルカー線沿いの店舗だった。
この店は、2012年には388坪のTrader Joe’sとして開店することになっている。
大成功は間違いなしだ。
Walmartは、サンフランシスコの市内や周辺の
開店予定立地を公表してないが、
Targetはすでに、約2500坪の店舗を
2012年初頭に開店することが決まっている。
場所はブルーミングデールズとノードストローム百貨店の入っている
Westfield Shopping Centerの隣のSony Metreonビル。
このターゲットには当然食品もおかれるはずだ。
近くではドラッグ・ストアのWalgreensが、2カ月ほど前から
本格的に青果、サンドイッチ、グローサリー、飲み物などを含む、
食品の扱いを増やしている。
まずシスコ周辺の12店舗で開始し、
やがてWalgreens全体の7000店舗に波及させる。
2011年6月21日、カリフォルニア州で128店舗目の
Fresh & Easy Neighborhood Marketが、
ついにサンフランシスコのリッチモンド地区に開店した。
周辺の住民には、郵便で5ドルのクーポンが配布された。
「我々は素晴らしいフーズを、
皆様の給与を奪うことのない低価格で提供します」
と書かれていた。
私は7月9日に見に行った。
天井が高く、今まで視察した店舗の中では、
一番洗練されていた。
客の教育水準が高く、セルフレジなども問題なくこなす。
洗練された客層である。
周辺には高級住宅街がある。
このFresh & Easyは、新しくて珍しいせいか、
土曜日だったからなのか、
今までのF&E店舗では一番客が多かった。
これまでは郊外の店が中心であった。
人口の密集地、都心部こそ、Fresh & Easyの最適地であったのだ。
この店には豊かな人々からも支持がある。
コンセプト、商品、価格には問題はなかった?
苦戦したのは、今までの立地に問題があった。
そう思えた。
アルバートソンは2007年に、すでにこのリッチモンド地区から撤退し、
セーフウェイとホールフーズとの競争が激化している。
Fresh & Easyは、この店舗ほか、
Delano’s の跡地である店舗(Bell Markets)数カ所の
リース契約を終えている。
合計12店舗をサンフランシスコ周辺で開店する予定だ。
Mollie Stone’s MarketもDelano’s の跡地2店舗を
リース契約する予定だ。
Whole Foodsはすでにシスコ市内だけで5店舗、
今後市内にあと2店舗を新規開店予定だ。
シスコ周辺には25店舗もある。
北カルフォルニアには35店舗。
同じくTrader Joe`sは、
サンフランシスコ周辺地区には47店舗もある。
いずれも30年前はゼロだった。
比較的、独立系のスーパーの存在が許されたサンフランシスコでも、
全国展開の食品スーパーのチェーンやディスカウント・ストア、
ドラッグ・ストアが攻勢をかけ始めた。
独立店舗は、もうなす術がなさそうな気がする。
ところがだ。
隣の街、バークレー市で2店舗経営している
バークレー・ボールは、異常な繁盛店である。
成功の秘密は圧倒的な青果の種類と量、
そして惣菜、自然食を品ぞろえし、低価格で販売していることだ。
2店舗で120億円(100円計算)売上げを誇る。
この店を見ずして、
アメリカの独立店舗・スーパーのことは語れない。
やがてWalmartの小型店、Walmart Expressが、
シスコ周辺や都心部に出てくるだろう。
一気に成功するとはとても思えないが、
カルフォルニアで金が発見されて150年。
ウォルマートが再び、サンフランシスコで金鉱を発見するかもしれない。
繰り返すが、北カルフォルニアは視察の宝庫だ。
浅野秀二
7月11日