零戦化現象に陥るな!
零戦化現象。
堺屋太一が『凄い時代』で指摘した。
戦前の日本技術の粋を集めた零式艦上戦闘機。
それがもたらした現象と概念。
速度は速い。
運動性能は高い。
航続距離は長い。
だから空中戦で抜群の能力を発揮した。
ただし、零戦を乗りこなすには、
1000時間以上の修練が必須だった。
10時間の飛行に耐える体力と気力も求められた。
つまりパイロットにとって「難しい飛行機」だった。
戦局が逼迫してきて、
多くの零戦パイロットが戦死すると、
大日本帝国海軍航空隊は、
制空権を奪われていった。
対してドイツのメッサーシュミットは、
300時間で空中戦技術をマスターできた。
アメリカのグラマンは、
100時間でマニュアルを憶えれば十分だった。
製造業の技術も、
小売流通業のテクノロジーも、
零戦化現象を起こしやすい。
技術の隘路に陥りやすい。
商品知識や商品構成でも、
零戦化現象は頻繁に起こる。
顧客の立場に立ってと唱えつつ、
零戦化していく。
もちろんマニュアル化のグラマン現象も、
もろ手を挙げて受け入れるものではない。
現代物量主義の限界は、
コモディティ化現象が証明した。
ワインの戦略的マーチャンダイジング。
生鮮食品や惣菜の商品化戦略。
衣食住のマーケティング戦略。
そのマス・カスタマイゼーション。
零戦化現象とグラマン現象のはざまに、
独自のストラテジーを組み上げる。
それは単なるトレンド追随作戦ではなし得ない。
自分の顧客とともに歩み続けるしかない。
〈結城義晴〉