言葉
言葉は不思議だ。
人間が人間であること、
ヒトが他の生物と異なることを、
証明しているのが言葉だ。
たとえば日本語と英語・フランス語・ドイツ語。
「市場」と“Market・Marché・Markt”。
いずれにも狭義の「いちば」の意味があり、
広義の「しじょう」の意味をもつ。
反対に同じ日本語でも、
誤解や錯覚はまかり通る。
「他山の石」を自民党現役幹事長が、
社会常識とは異なる認識で使ったらしい。
もちろん私たちにもある。
だから一時の恥は許そう、許してもらおう。
ただしすぐに訂正しよう。
正しい定義を調べよう、考えよう。
シンプルだけれどさまざまな解釈のある言葉。
難しいけれどそれでしか表わせない深い意味。
英語のままだが魅力的な概念の用語。
記号だけれど何度も使うに便利なもの。
半面、疲れ果てた古い言葉。
独り善がりのひけらかし修飾語。
体系のない借りもののカタカナ羅列語。
心のこもらない常套句。
はじめに言葉ありき。
言葉は神とともにあり。
言葉はすなわち神なりき。
〈ヨハネ福音書〉
言葉で知覚し、
言葉で思索し、
言葉で伝達し、
言葉で議論する。
新人諸君、先輩諸氏。
社長も部長も店長も。
言葉に鈍感な者は退け。
言葉で考えぬ者は去れ。
評論家もコンサルタントも。
識者も学者も、編集者も。
言葉に愚鈍な者は衰えることを知れ。
考えぬ者は滅び去ることを悟れ。
〈結城義晴〉