一人のお客さまに誠実を尽せ。
一人のお客さまに誠実を尽せ。
これが野越え山越えの精神である。
「ヨークベニマル十二章」の有名な第二章。
究極のカスタマイズド・マーケティング。
孤高のワン・トゥ・ワン・マーケティング。
そしてラスト・ワンマイルの根本思想。
しかしいつまでも、
一人のお客さまだけでは、
商売にならない。
一人のお客さまでは、
売上げも儲けも大きくならない。
店の成長も会社の発展もない。
だから一人のお客さまを、
十人のお客さま、百人のお客さまへ、
さらに千人へ、万人へ、億人へ、兆人へ。
そのためにチェーンストアが考え出された。
そのためにセルフサービスが生まれた。
業態やフォーマットが試行された。
カスタマイズから始めて、
それを増やしていく。
それがマス・カスタマイゼーションだ。
ひとりずつ、
すこしずつ、
いっぽずつ。
逆に大衆やマスから始めると、
必ず行き詰まりがやってくる。
一人のお客さまを忘れてしまうからだ。
大衆から始めるのは革命である。
革命は世の中を変える。
しかし永遠の商売は革命ではない。
かくて革命の終わった小売り商いの原則は、
マス・マーケティングではなく、
マス・カスタマイゼーションとなる。
いま、革命の発想から事を起こしてはならない。
一人のお客さまに誠実を尽せ。
野越え山越えの精神から始めよ。
〈結城義晴〉