常住坐臥、世のため、人のため。
佐賀鍋島藩の「葉隠」は、
「死ぬことと見つけたり」と説く。
藩内の武士に常住坐臥(じょうじゅうざが)、
死と隣り合わせに生きることを教えた。
ウクライナの男たちはいま、
葉隠の境地にあると思う。
その葉隠伝承者の山本常朝は言う。
「我も人、生くることが好きなり」
死と隣り合わせで生をまっとうする。
死の中に貪欲に生を見い出す。
鍋島の侍たちは藩のため、主君のため。
ウクライナの闘士たちは国のため、主権のため。
コロナ禍の断絶の淵にある商人は、
「売らぬことと見つけたり」である。
常朝の言に従えば、
「売ることが好きなり」でもある。
創業のころのイトーヨーカ堂。
伊藤雅俊は母から教えられた。
「お客さまは来てくださらないもの」
だから売ることよりも信頼と誠実を大切にした。
ピーター・ドラッカーは言う。
「マーケティングの理想は、
販売を不要にすることである」
無理に売ろうとしないことだ。
「マーケティングが目指すものは、
顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、
おのずから売れるようにすることである」
売れる仕組みをつくることだ。
売るための仕掛けそのものが、
プロモーションならば、
顧客を知り、静かに働きかけるのが、
マーケティングである。
コロナ禍でDXが進捗するとき、
プロモーションからマーケティングへと、
売るための考え方は包括的に変容し、
むしろ原点へと回帰する。
鍋島の侍たちは藩のため、主君のため、
ウクライナの闘士たちは国のため、主権のため。
商人は顧客のため、社会のため。
常住坐臥で世のため、人のため。
〈結城義晴〉