昨日を廃棄せよ
中期経営計画書を読む。
分厚いワードの書類またはパワポのシート。
びっしりと書き込まれた活字と数字。
基本は現状維持、
はたまた希望的観測。
そして暗黙の言い訳の羅列。
現実を直視せず。
視点は上向き、現場は蔑(ないがし)ろ。
組織の壁の臭いがぷんぷん。
美辞麗句と使い古された用語。
宙に浮いた最新のトレンドワード。
そのくせ最後に顧客主義。
リスクを冒さない。
スピード感がない。
だから未来がない、夢がない。
中期経営計画書を読む。
死んだ書類、熱のない計画書。
確信のない提案。
どれだけの時間がかかったのか。
どれだけの労力を費やしたのか。
何を手本としたのか。
しかし計画とは、
「あらゆる種類の未来を、
現在に集約するタイムマシーンである」
計画とは、
未来を考えて今日行動するために、
今日意思決定を行うことである。
未来とは、計画とは、
望めばその通りに起こるわけではない。
八つの男の子が消防士を夢見ることではない。
未来を築くには、
いま、決定しなければならない。
いま、リスクを負わなければならない。
いま、行動しなければならない。
いま、人材を割り当てなければならない。
いま、仕事をしなければならない。
明日を実現するための第一歩は、
昨日を捨てることである。
昨日を廃棄することである。
ほとんどの計画は、
新しく付け加えるべきことに、
取り組もうとする。
しかし明日、新しいことを行うためには、
もはや生産的でなくなったもの、
陳腐化したものから自由になることである。
死んだ書類。
熱のない計画書。
確信のない提案。
その呪縛から脱するには、
未来を現在に集約する、
タイムマシーンに乗ることである。
(ピーター・ドラッカー『マネジメント』より)
〈結城義晴〉