嘘をつく店
倉本長治は言い放った。
「この店は滅びる」
よほど腹が立ったのか、
それともひどく悲しかったのか。
お客を無視する店。
失礼な店。
買いたい品が見つかりにくい店。
欲しいものが品切れしている店。
買った商品が傷んでいる店。
きたない店。
一番いけないのは、
嘘をつく店だ。
正直を謳っていながら、
小さな嘘を潜ませている店である。
「安い」と「良い」とは、
突き詰めると同じことだ。
品質が同等で価格が低い状態を「安い」といい、
価格が一定で品質が高い状態を「良い」という。
品質と価格の天秤で測ると、
「安い」と「良い」とは同じ価値なのである。
ただし、「安い」も「良い」も、
嘘をつかない店でのことだ。
「安いよ、安いよ」と、
大声を張り上げている者にかぎって、
嘘つきの店がある。
不実の店が多い。
こんな店には、
一瞬の「買物の得」はあっても、
一生付き合う「生活の得」はない。
そして人々はそれを瞬時に見抜くのだ。
競争はますます激しくなる。
情報は素早く広く還流する。
そして賢い消費者たちを誕生させる。
逆に、競争者たちは淘汰されていく。
それは現代社会の宿命である。
競争は進化を促す。
見えざる手がそれを後押しする。
だから私もこう言い切ろう。
嘘をつく店など、滅びてしまえ。
永遠に、この地上から消え失せろ。
〈結城義晴〉
(かつてのMessageを書き直しました)