商売の「阿吽」
「阿吽」は古代インドの梵語だ。
阿(a)は口を大きく開いたときの音。
吽(m)は口を完全に閉じたときの音。
梵語の母音は「阿」から始まり「吽」で終わる。
そこから「阿吽(あうん)」は、
宇宙の始まりから終わりまでを表すようになった。
ときに「阿」は真実や悟りにたとえられ、
「吽」は智慧(ちえ)や涅槃(ねはん)を意味する。
「バイブルや論語には、
金儲けは書いてない。
でも金儲けの中には、
バイブルや論語が必要なのである」(倉本長治)
商売には梵語も必要である。
「阿吽」の考え方が求められる。
始まりから終わりまで気を抜いてはならない。
発注から売り切りまで手を抜いてはいけない。
売り手たちは、
阿吽の呼吸で店や売場を運営する。
店長が「阿」と問えば、
チーフが「吽」と答える。
そして売り手と買い手は、
阿吽の仲で買物体験を共有する。
売り手が「阿」と提案すれば、
買い手が「吽」と反応する。
また買い手が「阿」とクレームを言えば、
売り手はすばやく「吽」と対応する。
この繰り返しが「信頼」を生む。
この積み重ねが「信用」となる。
阿吽の呼吸で商売し、
阿吽の仲で繁盛する。
阿吽の呼吸でマネジメントし、
阿吽の仲でオペレーションする。
「阿吽」は始まりから終わりまでを表す。
「阿吽」は真実と智慧を意味する。
商売も仕事も初めから終わりまで、
真実と智慧に貫かれていなければならない。
〈結城義晴〉