フジテレビの「長時間記者会見」と岡藤正広の「利は川上にあり」
フジテレビの長時間記者会見。
昨日1月27日午後4時から、
今日28日午前2時半過ぎまで。
約10時間半以上、
カメラは回り続け、
テレビ放映された。
CMもニュースも、
一切、入らず。
ただ壇上のフジテレビ関連のトップと、
質問する記者連だけの、
異様に単調な番組。
もちろん元SMAPの中居正広問題。
フジテレビの経営体質問題。
午後7時から10時までの時間帯は、
平均視聴率(関東地区)で13.1%だった。
会社はもう崩壊寸前。
しかし編成局長はしてやったりか。
そういったところが、
逆にフジテレビらしいが。
私も㈱商業界社長時代に、
労働組合と14時間の団体交渉をしたことがある。
午後6時から夜を徹して朝8時まで。
何度もなんども休憩をとったが、
それにしても互いに粘り強い労使だった。
朝が白々と明けてきたときに、
合意約款を協議約款に変更する了解を得た。
長時間記者会見の最後のところを見届けて、
そのときのことを思い出した。
さて今日は、東京・小平。
第一屋製パン㈱の本社と工場がある。
その工場敷地内のお稲荷さん。
毎月の取締役会。
年度末の実績が出た。
それから様々な報告と審議。
いつもよりも長い会議だった。
野中郁次郎先生のご逝去のあとで、
私は「ワイガヤ」の気分があった。
フジの長時間記者会見のように、
取締役が質問して、
執行役が答えるのではなく、
もっとワイワイガヤガヤと話し合っていい。
そんな気分になった。
そのなかで褒めること、指摘すること、
賛否両論、喧々諤々があって、
みんなが前向きになるのがいい。
日経新聞「私の履歴書」が好調だ。
今月は伊藤忠商事CEOの岡藤正広さん。
中国大使を務めた丹羽宇一郎さんが、
伊藤忠社長昇格の直前にまとめたディール。
岡藤さんは言う。
「いまや伊藤忠の財産だと思う」
そして胸を張る。
「利は川下にあり」
「これは私の経営戦略の柱をなす考えだ」
「消費者の声を直接拾い経営戦略に反映する、
マーケット・インに徹することで、
自ら付加価値を創造していけるからだ」
ん~、半分賛成。
異論・反論も唱えたいが、
それはあとで述べよう。
2015年にチャンスが巡ってくる。
ユニーグループ・ホールディングスと、
ファミリーマートとの経営統合だ。
「欲しいのはコンビニだけだった」
ユニーはいらないが、
サークルK・サンクスは、いる。
そこで岡藤さんはある人を訪ねる。
セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長。
いきなり直球を投げ込んだ。
「ファミリーマートと提携しませんか」
ファミリーマートとサークルKサンクス、
それをセブン-イレブンに差し出そうという提案。
どう見ても無理だろうな。
鈴木さんは規模を追う経営者ではない。
お荷物を抱え込むはずがない。
それにセブン-イレブンは、
ファミリーマートやローソンを食って、
成長を続けていたのだ。
それを統合してしまったら、
伸びシロを自ら消してしまうことになる。
案の定、「コンビニ2強連合構想」は実現せず。
しかし鈴木さんから助言をもらう。
「商社にスーパーの経営は不可能ですよ」
岡藤さん。
「私の仮説が確信に変わった」
まずはユニーもろとも統合して、
ファミマとサークルKサンクスの融合を進める。
いずれユニーを切り離す。
「格好の相手はすでに意中にあった。
ドン・キホーテだ」
これもうまくいって、
サークルKとサンクスだけ手に入れた。
「約4年がかりの業界再編」
商社マンとして、
岡藤さんは本当に凄い。
けれど「利は川下にある」という考え方は、
絶対的なテーゼではないと思う。
川上を総合的に制覇する総合商社だからこそ、
「利は川下にある」のだ。
川下を視野に入れない商社や製造業は、
もはや前時代のレガシーである。
もちろん、
プロダクト・アウト一辺倒だったら、
マーケット・インは必須だ。
川下は顧客に近い。
そこに「利」の元があると考えるのは妥当だ。
いわばこれが初期のマーケティングの発想である。
ただし川下にどっぷり浸かってしまったら、
そう簡単に「利」を生むことはできない。
小売業のほとんどが、
それに苦しんでいるからだ。
小売業を貫徹するセブン&アイですら、
イトーヨーカ堂はうまく経営できていない。
総合商社にとってこそ、
川下に利があるのだ。
だとすれば小売業が、
商社機能をもてば、
「利は川上にある」となる。
ユニクロもニトリも、
川上に利を求めている。
ダイエーの中内功さんは、
「工場をもたないメーカー」と言い続けた。
さらに言えば、
伊藤忠におけるファミマは、
「胴元商売」である。
伊藤忠はコンビニの本部機能を担う。
商社とフランチャイズビジネスは、
胴元商売という点で親和性が高かった。
しかし本当の、最後の川下は、
フランチャイズ加盟店である。
そして加盟店オーナーたちは、
楽に「利」を得ることなんてできない。
製造業も卸売業も、
この理屈がわからねばならない。
山崎製パンのデイリーヤマザキは、
残念ながらコンビニチェーンのなかで、
後塵を拝している。
主語は何か。
主体は何か。
それを充実させるために、
バーチカルに統合を進める。
あくまでも本分、本業を貫かねばならない。
ウォルマートは1990年に、
川中の卸売業マクレーン社を買収した。
そして同社から食品を学んだら、
2003年に黒字の卸売業を売却してしまった。
本分がわかっていたからだ。
利は川下にあり。
けれど川下は、
苦しくて、細かくて、難しい。
それを成し遂げるところに価値が生まれるのだ。
〈結城義晴〉
2 件のコメント
自分の本分は何か、ついて考えさせられます。
手を広げるのはいい。新しい分野に挑戦するのもいい。
ただそこに、己の本分に立脚した文脈、ストーリーがなければならないと理解しました。
吉本さん、その通りです。
使命感が大事だと思います。