結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2025年04月06日(日曜日)

ユヴァル・ハラリの「クモの巣」と「繭に閉じ込められる世界」

日経新聞の[直言]
ユヴァル・ノア・ハラリ登場。
Yuval Noah Harari。

AIと民主主義を語る。

ハラリはイスラエルの歴史学者、哲学者。
1976年、イスラエル生まれの49歳。

ヘブライ大学で地中海史と軍事史を履修。
オックスフォード大学では、
中世史、軍事史を専攻、博士号取得。

現在、ケンブリッジ大学特別研究員。

著作は大作主義。
2011年、デビュー作『サピエンス全史』で、
彗星のように登場し、
2015年、『ホモ・デウス』で、
「知の巨人」のポジションを確立。

2018年、『21Lessons』では、
世界に鋭い提案をした。

著書は65の言語に翻訳され、
累計4500万部発行。
1d00292d-38fa-48bb-ae06-f915f2ce2014._CR0,0,3000,600_SX1920_
私はいつもハラリの発言に注目している。

『サピエンス全史』は漫画版がお薦めだ。
91lSit+5PWL._SL1500_

これはkindleで読まないほうがいい。91rX6TyMmpL._SL1500_

新著は『NEXUS 情報の人類史』
「ネクサス」は「絆」「中枢」などを意味する。
71ZqHAYCJkL._SL1500_
上巻は「人間のネットワーク」

下巻は「AI革命」
71U9cb3UlBL._SL1500_

発刊は「トランプ2.0」の前。
だからトランプには全く触れていない。

そこでハラリのトランプ評。
「AI革命という、
宗教改革や産業革命より重大で
途方もない課題に直面している時に、
最も影響力のある国に
最も危険な指導者が現れた」

「政治も経済も
人と人の信頼関係で成り立つが、
トランプ氏もAI革命もそれを損ない、
分断を広げる可能性がある」

日経側の質問がとてもいい。

「エコーチェンバー」
AIやSNSの普及によって、
自分に近い考えや情報に閉じこもる現象。

トランプはその申し子か。

「そう思う。
自由な報道や独立した司法など、
権力のチェック機能を
解体しようとするかに見える」

「米国は4年に1度、権力を返還し、
別の指導者を選択する機会を設ける、
優れた仕組みと伝統を持つ」

「私はこの『自己修正メカニズム』が、
民主主義の根幹だと信じるが、
それが危うい」

経営においても、
「自己修正メカニズム」が必須だ。

「トランプ氏は新しい世界秩序について
なんら意味ある指針を示さない」

「自由貿易や多様性などの普遍的価値、
国際法による秩序を、攻撃しているだけだ」

「ウクライナを侵略したロシアに同調し、
『弱い者は従え』というニュアンスの
発言をしている」

「他国はもう国際法や米国に頼れず、
軍事費を増やして
戦争で自国を守るしかないということになる」

「人類は岐路に立っている」

「我々はついに人間でないもの、
私たちより言語や数字に秀でた
AIという技術を創造し、
自らの世界に取り込もうとしている」

ハラリはAIを危険視する。

「何千年、何万年という歴史を振り返れば、
人類は言語という道具で
互いの信頼を醸成してきた」

「そこにAIが割り込んだ時、
以前と同じような、
民主主義や経済活動が成り立つだろうか」

ハラリはAIを警戒する。

「民主主義を守る方法は2つある」

「まずボット、つまり、
インターネット上で人間のように振る舞う
『偽物人間』を法的に禁じることだ」

「ボット」(bot)は、
IT分野で使われるロボット(robot)の略語。

「人と区別ができない状態では、
偽の物語を流して誤った方向に人を導く。
人間もそれに気づかない」

恐ろしいことだ。

「もう一つは開発主体の企業が、
AIの行動に責任を負うことだ」

「IT企業は『言論の自由だ』などと主張するが、
彼らの言論はAIのアルゴリズムに人間のふりをさせ、
何かを決めさせているだけだ」

「要は、IT企業のビジネスモデルに原因はある」

「彼らは人々に長い時間、AIサービスを使わせたい。
エンゲージメントを高めたい。
それがフェイクニュースや陰謀論、憎しみを
まき散らす元凶になっている」

「我々は人類史上、
最も洗練された情報技術を持つが、
まともに話すことも意見の一致を見ることも
しなくなりつつある」

「米国の民主党も共和党ももう、
何かで合意することはないのではないか」

「AIが助長する分断の時代。
生き抜くためのカギと考えるのが、
『自己修正メカニズム』と『信頼の醸成』だ」

新著には「シリコンのカーテン」という、
象徴的な表現が出てくる。

「インターネットは当初、
ワールド・ワイド・ウェブといわれ、
世界中を覆う巨大な『クモの巣』のような存在だった」

「だが、AIは国と国、個人と個人を
『繭』のような狭い世界に閉じこめる懸念がある」

「人類はそれぞれ異なる現実を見て、
意見の一致も見にくくなる」

「取引も気候変動のような重要な問題の話し合いも
できなくなる懸念がある」

「クモの巣」ではなく、
「繭」に閉じ込められる世界。

「地球上あちこちに工場を構えたり、
貿易をしたりするのが難しく」なる危険性がある。

チェーンストアやメーカーの、
マスマーチャンダイジングや、
ソーシング活動の考え方が根本的に変わる。

「世界のつながりはこのままでは弱くなる。
各国が自己修正メカニズムを働かせ、
注意していなければ、いずれ切れてしまう」

米国と中国でAI技術を独占しそうな状況。

「2カ国以外の国々の団結が必要だ。
19世紀の産業革命が帝国主義に行き着いたように、
21世紀もAI化の格差が秩序をゆがめる」

「新薬を発明したり、
気候変動への対処に役に立てたりできるし、
AIの載った自動運転車が増えれば、
毎年100万人の命が救われるかもしれない。

「だが、常に危険も伴う。
エイリアン(人間ではないもの)の知性が出す
アイデアや下す決定は予測ができない」

「人間の理解を超えた存在が導く予測を、
人間が信じ、使いこなしていけるのか」

質問者は最後に「ドラえもん」を持ち出す。

ドラえもんは一種のAI。
だが神でもないし、
恐れられる対象でもない。
友達かペットだ。

日本人は脅威というより少し引いた目線で
AIを受け入れるかもしれない。

「面白い議論だし、
ドラえもんも読んでみよう」

ハラリは最後に、
ドラえもんを読むことになった。
いいことだ。

やや悲観的に過ぎるユダヤ人が、
日本的になってくれたら、
もっといい。

しかしAIとSNSによって、
「繭」に閉じ込められる世界。

その「繭」を利用して、
商売繁盛を狙ってはいけない。

〈結城義晴〉

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

ミドルマネジメント研修会
海外視察研修会
商人舎の新刊
前略お店さま

チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
2025年4月
« 3月  
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930 
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.