河合隼雄の「逆転思考」と遠藤周作の「くるたのしい」

4月に入った。
4月1日は、
エイプリルフール。
河合隼雄(かわいはやお)さん。
1928年~2007年。
京都大学教授、日本のユング派心理学の第一人者。
臨床心理学者、文化功労者。
そして文化庁長官を務めた。
その河合さんは「日本ウソツキクラブ会長」を自称。
架空の親友・大牟田雄三との共著は、
『ウソツキクラブ短信』
最近の心理学の研究では、
ウソは高く評価されているらしい。
それを踏まえて某教育委員会が、
「ウソのつき方」を教え、
生徒たちに週13回以上のウソをつくように指導した。
すると生徒たちの精神衛生がぐっとよくなり、
いじめも不登校もまったく消滅……
という報告も、あるらしい‽!
河合さんの箴言(しんげん)。
「うそは常備薬、真実は劇薬」
エイプリルフールにこそ読むべき本だ。
その河合隼雄さんの著書。
『「老いる」とはどういうことか』
昨日のブログは「若返れ」と主張した。
けれど今日は「老いも、いい」という話。
河合さんの「老いる」の本の「その一の2」
「逆転思考」
――昔々、ある殿様が老人は働かず、無駄だから山に捨てるように、というお触れを出した。ある男が自分の父親の老人を捨てるにしのびず、そっとかくまっておいた。
殿様はあるとき、灰で作った縄が欲しいと言いだした。皆がわれもわれもと灰で縄をなおうとするが、どうしても作れない。
例の男が父親に相談すると、わらで固く固く縄をない、それを燃やすといいと教えてくれた。なるほど、やってみると灰の縄ができたので殿様に献上した。
殿様は喜んで誰の考案かと言う。実はかくまっていた老人の知恵で、と白状すると、殿様は、老人は知恵があるので、以後捨てずに大切にするようにとお触れを出した――。
おもしろい。
縄を作ってから灰にする。
「逆転思考」
そこで河合さんの提案。
「老人は何もしないから駄目」と言うが、
「老人は何もしないから素晴らしい」と、
言えないか。
「青年や中年があれもするこれもすると
走りまわっているのは、それによって、
生きることに内在する不安を
ごまかすためではなかろうか」
「何もせずに『そこにいる』という老人の姿が、
働きまわる人々の姿を照射して、
不思議な影を見せてくれるのである」
同感したい。
私は何もせずにいることができない。
まだまだ「生きることに内在する不安」に、
勝てないでいるのかもしれない。
これは嘘ではない。
さて商人舎流通SuperNews。
帝国データバンクnews|
4月の値上げ4225品目/1年半ぶりに4000品目超
主要食品メーカー195社の調査。
4月の飲食料品の値上げは4225 品目、
値上げ1回当たりの平均値上げ率は月平均16%。
今年1月以降4カ月連続で前年を上回った。
値上げのピークは2023年10月だった。
それ以来、1年6カ月ぶりに、
単月で4000品目を超える。
「値上げの季節」は、売りにくい。
覚悟が必要だ。
4月の値上げ品目をカテゴリーで見ると、
調味料が2034品目で最多。
酒類・飲料は1222品目。
缶ビール・缶チューハイ、
コーヒー飲料が値上げ。
加工食品は659 品目。
2025年通年での値上げは、
9月までの発表分で累計1万1707 品目。
昨年の実績は1万2520品目だった。
昨年に比べて値上げペースは早い。
9月までのカテゴリーでは、
冷凍食品やパックごはんなど加工食品が3499 品目。
調味料が3294 品目、酒類・飲料が2089 品目。
2025 年の値上げ要因。
原材料高が97.8%。
物流費由来の値上げは81.8%、
人件費要因の値上げは45.1%。
これにドナルド・トランプの、
「関税不況」が重なってくる。
今年の夏から秋、年末まで、
厳しい消費局面が続く。
賢い「老人」に聞いたら何と言うだろう。
「逆転思考」と一言、
答えるに違いない。
「具体的方策は自分で考えよ」
苦しければ苦しいほど、面白い。
やりがいがある。
作家の遠藤周作さんと対談した。
もうお二人とも故人だ。
遠藤さんは言った。
「小説書きの仕事はくるたのしい」
「くるたのしい」は「苦楽しい」
苦しくて、楽しい。
苦しいことは、楽しい。
苦しいほど、楽しい。
そして楽しいことには必ず、
苦しいことがつきまとう。
今年の4月以降は、
「くるたのしい」
ああ、くるたのしい。
くるたのしい。
〈結城義晴〉